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「顔、見えないけど……それでも、気になる?」
初めて2Shotに切り替わった瞬間、彼女はそう問いかけた。
画面に映るのは、口元から下だけ。柔らかなセーターに包まれた胸元と、ふとした瞬間に覗く、白い太もも。
ただそれだけの情報に、僕はもう目が離せなくなっていた。
ライブチャットを開いたのは、仕事で心身ともにすり減った夜。誰かの温もりに触れたくて、癒しが欲しかった。ただ、それだけのはずだった。
けれど、彼女の声を聞いた瞬間、すべてが変わった。
少し低めで、慈しむように響く声。
一つひとつの言葉を、ゆっくりと、丁寧に紡ぐ。
ときおり訪れる沈黙は、まるでこちらの心を見透かしているかのようで。
その声が、夜の静寂に優しく溶けていく。
少しずつ、心がほどけていく
「アダルトは……ちょっと、苦手になっちゃって」
そう打ち明けてくれたのは、会話を重ねて少し経った頃だった。
多くを語ることはなかったが、その声色にほんの少しだけ寂しさが滲んだのを、僕は聞き逃さなかった。
それでも彼女は、僕との時間を大切にしてくれた。
──セーター越しに伝わる、柔らかな曲線。
──時折、深く刻まれる胸の谷間。
顔は見えない。
だが、そこには確かな「伝えようとする意志」があった。
言葉で、仕草で、そして絶妙な間の取り方で。
視線ではなく、音と、画面越しの温度で誘われるような、不思議な感覚だった。
「ちょっと、変な話してもいい?」
そう前置きして、彼女はかつてのエッチな体験を、恥じらうように話し始めた。
それに引きずられるように、僕もまた、心の鎧を一枚ずつ脱いでいく。
気づけば、そこにあったのは赤裸々な言葉の応酬。なのに、不思議といやらしさはなく、むしろ親密さだけが深まっていく。
会話とともに高鳴る鼓動。温まっていく空気。
画面越しなのに、なぜか彼女の甘い匂いまで感じられるような気がした。
顔が見えないからこそ、僕の意識は彼女の胸元や指の動き、微かな息遣いへと、鋭く集中していった。
触れないのに、熱くなる
セーターの下で、その存在を主張する柔らかな膨らみ。
Dカップだと彼女は言ったが、そんな記号では表せないほどの生命感があった。
「水着、着てみようか?」
水着イベントの日、彼女は悪戯っぽくそう言った。
画面に現れたのは、普段とは違う、少しだけ大胆な彼女。
濡れたような光沢を放つ生地が、その肌に吸いつくようにフィットしている。
くっきりと浮かび上がる胸の形。
しなやかにカーブを描くお尻のライン。
それはもはやエロスを超えた、一つの芸術だった。
露骨ではないからこそ、際立つ究極の色気がそこにあった。
「……ねえ、今してる?」
そんなふうに、吐息まじりに尋ねられた夜があった。
心臓が跳ねるのを感じながら、正直に頷く。
すると彼女は、愛おしそうにふっと笑って、こう言った。
僕が本当に求めていたもの
「いいよ。見ながらして?」
その一言で、僕の世界は反転した。
画面の向こうで、彼女は応えるようにそっと胸を揺らす。
見えない顔の奥にある、確かな感情の揺らめきが、痛いほど伝わってくる。
これまで、何人もの女性が僕のために裸を見せてくれた。
でも、僕の心を完全に奪ったのは、顔も見せず、触れることさえできない彼女だった。
雰囲気。
間合い。
そして、余韻。
彼女は、言葉や肌を晒すこと以上に大切なものを知っていた。
そして、それを惜しみなく僕に与えてくれた。
アダルトな行為はないのに、こんなにも満たされたのは初めてだった。
もしかしたらこれこそが、僕がずっと求めていた、本当の意味での「エロス」だったのかもしれない。